根尖性歯周炎
apical-periodontitis
根尖性歯周炎とは?
根尖性歯周炎とは、歯の根っこの先端(根尖部)とその周囲の組織に炎症が起きる病気です。多くの場合、むし歯が悪化して歯の神経(歯髄)に細菌が侵入し、それが根の先まで到達することで発症します。
私が歯科医院で診療していると、「歯が痛くて夜も眠れない」と訴える患者さんが少なくありません。検査してみると、レントゲン写真で歯の根っこの先に黒い影(透過像)が見えることがあります。これが根尖性歯周炎の典型的な所見です。
歯髄が死んでしまった歯(失活歯)は、外からは健康な歯と見分けがつきにくいこともあります。そのため、自分では気づかないうちに病気が進行していることもあるのです。
こんな方におすすめ
この記事は、以下のような方に特におすすめです。
- 歯を噛むと痛みを感じる方
- 歯の治療後も違和感や痛みが続いている方
- 歯の根っこの治療(根管治療)について知りたい方
- 歯茎に腫れや膿袋ができている方
- 歯の痛みで夜眠れないことがある方
- むし歯の治療を放置している方
主な症状と見分け方
根尖性歯周炎の症状は、その進行度合いによって異なります。初期段階では、ほとんど自覚症状がないこともあります。しかし、炎症が進むと以下のような症状が現れます。
痛みの特徴
根尖性歯周炎の痛みには特徴があります。歯を噛んだときや指で押したときに痛みを感じることが多いです。これは、歯の根っこの先端部分に炎症が起きているため、その部分に圧力がかかると痛みが生じるのです。
また、夜間に痛みが強くなることもあります。横になると血流が変化し、炎症部位の圧力が高まるためです。「夜になると痛みで目が覚める」という訴えは、根尖性歯周炎の可能性を示唆します。
歯茎の腫れや膿袋
進行すると、根っこの先端部分の炎症が周囲の組織に広がり、歯茎が腫れることがあります。さらに悪化すると、膿がたまって「膿袋(のうぶくろ)」ができることも。この状態になると、歯茎に小さな穴ができて膿が排出されることもあります。
この膿の出口を「瘻孔(ろうこう)」といいます。瘻孔ができると、一時的に痛みが和らぐこともありますが、問題が解決したわけではありません。適切な治療を受けなければ、炎症は再び悪化します。
根尖性歯周炎の原因
根尖性歯周炎の最も一般的な原因は、むし歯の放置です。むし歯が進行すると、細菌が歯の内部に侵入し、歯髄(神経)に達します。そこで歯髄炎が起こり、やがて歯髄が壊死します。壊死した歯髄内で細菌が増殖し、根の先端に到達すると根尖性歯周炎が発症します。
また、以前に受けた根管治療が不十分だった場合も原因となります。根管内に細菌が残っていたり、根の先まで十分に洗浄・消毒できていなかったりすると、時間が経ってから症状が出ることがあります。
外傷も原因の一つです。歯に強い衝撃が加わると、歯髄が損傷したり、血流が途絶えたりして死んでしまうことがあります。死んだ歯髄は細菌の温床となり、根尖性歯周炎につながります。
診断と検査
根尖性歯周炎の診断には、いくつかの検査が必要です。まず、歯科医師による問診と口腔内診査が行われます。痛みの場所や強さ、いつから始まったのかなどを詳しく聞かれるでしょう。
次に、レントゲン検査が行われます。根尖性歯周炎があると、歯の根っこの先端部分に黒い影(透過像)が見られます。これは、炎症によって骨が溶けている部分です。
また、歯の生死を確認するため、電気歯髄診や冷温診などの検査も行われます。根尖性歯周炎の場合、多くは歯髄が死んでいるため、これらの刺激に反応しません。
治療法と選択肢
根尖性歯周炎の治療は、原因である感染源を除去することが基本です。主な治療法は以下の通りです。
根管治療(根の治療)
最も一般的な治療法は根管治療です。これは、歯の神経(歯髄)を完全に取り除き、根管内を徹底的に洗浄・消毒した後、密閉する治療です。
根管治療は通常、複数回の通院が必要です。まず、特殊な器具を使って根管内の感染した組織や細菌を取り除きます。次に、薬剤を用いて細菌を殺し、十分に消毒します。最後に、根管充填材という特殊な材料で根管を密閉します。
根管治療後、歯の強度を回復させるためにクラウン(被せ物)を装着することが多いです。これにより、歯の破折を防ぎ、長期的な予後を改善します。
外科的処置
通常の根管治療で改善しない場合、歯根端切除術などの外科的処置が考慮されます。これは、歯茎を切開して根の先端部分にアクセスし、感染組織や肉芽腫を直接除去する手術です。
この処置は、根の形態が複雑で通常の根管治療では到達できない部分がある場合や、治療後も症状が改善しない場合に選択されます。
抜歯
症状が重度で他の治療法では改善が見込めない場合、最終的には抜歯が選択されることもあります。抜歯後は、ブリッジやインプラント、義歯などの方法で欠損部を補います。
予防と日頃のケア
根尖性歯周炎を予防するためには、以下のことが大切です。
早期のむし歯治療が最も重要です。むし歯を放置せず、小さいうちに治療することで、根尖性歯周炎のリスクを大幅に減らせます。
また、定期的な歯科検診も欠かせません。半年に一度の検診で、目に見えない初期のむし歯や問題を早期発見できます。
日々の丁寧な歯磨きと歯間ケアも重要です。特に就寝前の歯磨きは、夜間の細菌増殖を防ぐ効果があります。フロスや歯間ブラシを使ったケアも併せて行いましょう。
まとめ
根尖性歯周炎は、適切な治療と予防で防ぐことができる病気です。痛みや腫れなどの症状がある場合は、早めに歯科医院を受診しましょう。早期発見・早期治療が、痛みの軽減と歯の保存につながります。
日頃のケアと定期検診を心がけ、健康な歯を守りましょう。歯の健康は、全身の健康にもつながる大切なものです。